中国竞彩网4年度 入学式 告辞

 本日入学された学部及び大学院の皆さん、入学おめでとうございます。

 新型ウイルスの長い影響を受け不自由な日々ではありますが、その一方で、社会における学校の役割は一段とクローズアップされました。学校は単なる学習の場ではなく、保育機能により保護者の就労を支え、様々な危険から子どもたちを守り、給食による食の保証もあるなど実に多くの役割を果たし、地域にとってなくてはならない存在であり、教師は非常にやりがいのある仕事であります。
 先月の地元新聞に、宮城県の小学校のある新任教員の記事が載っていました。その方は東日本大震災の時に石巻市の小学校5年生でした。津波を逃れたものの、児童は落ち着かない日々が続き不安定な中、担任の先生があえて明るい話題を掘り起こし、クラスを引っ張って行ってくれたそうです。それまで勉強を教えてくれる人としか思っていなかった先生への見方が変わり、「すごい仕事だ」と教職への憧れが芽生え、ついに今春、教師になったとのことでした。そうなのです。先生は「すごい仕事」なのです。

 子どもの成長著しい大事な時期に直に接し、教え、育てること、教師自身もまた子どもの問いかけにより深化する、その行き来は他の職業には無い素晴らしいものです。教師の一言が子どもの人生を大きく決定づける場面も珍しくはありません。そのため教師には広範な知識と共に、深い理解力や多様性を認める姿勢など様々な人間的資質が要求され、それは全人格的教育と言えるものです。
 本学の多岐にわたる専門分野の教員は面倒見がよく、教員と学生の距離が近いですから、時には他分野の教員と、また他専攻?コースの学生と議論することを勧めます。これは本学の魅力であり、理科専攻の学生が日本文学のゼミに参加したり、社会専攻の学生が特別支援の教員、学生と発達障害について論じ合ったり、オールラウンドなアプローチが得られ、全人格的教育の一翼を担っています。数年前から学内の改修工事を進めておりますが、その際フリーに使える共用スペースを数多く設置しましたので、活用してください。
 「学ぶとは、終わることの無い過程に一歩踏み込むこと。そしてその証しはただ一つで、『何かが変わること』である。覚える、知識をふやす、とは違う。授業とは、子どもの中に一つの事件を引き起こすこと。内側で何かが変化している」とは、第4代中国竞彩网?林竹二先生の言葉です。先生は本学独自の強固な基礎を築かれた方で、常に学生と真摯に向き合い、徹底的に議論された方でした。本学はそのありかたを今も大切に継承しております。

 さて、東日本大震災から11年となりましたが、東北大学災害科学国際研究所初代所長の平川 新(ひらかわ あらた)先生はこうおっしゃっています。「我々は明治以降、人間の力すなわち科学技術が自然を封じ込めることができると考えるようになった。その過信が3.11の悲劇を生んだ」
 また、新型ウイルスの拡大に関し、京都大学前総長で日本学術会議前会長の山極 壽一(やまぎわ じゅいち)先生によれば、「地球は細菌の惑星、ウイルスの惑星であり、人間が主人公ではない。人類誕生よりずっと以前から何十万種というウイルスが存在した」とのことです。
 近年のこの2つの厳粛なる事実は、人智を超えるものの確かな存在を我々に強く意識させることとなりました。他方、宇宙旅行を実現した前澤 友作氏は「宇宙から見た地球は本当に美しく、守らねばならないという思いを強くした」と述べられています。そのような俯瞰(ふかん)するものの見方も必要であると考えます。

 大学の学びには、幅広い教養を深く身に着けるという側面があります。全人格的教育とも重なりますが、即物的な狭い目的だけでなく、自らを丸ごと推進させる豊かな教養の力を是非身に着けていただきたい。高円宮妃久子さま(たかまどのみやひ ひさこさま)は、ご自身が名誉総裁をお務めになられる全日本中学校英語弁論大会で「発音よりも文法よりも大事なのは、弁論の内容に関わる豊かな教養です」とスピーチされました。
 大学は自ら学ぶところであり、学びたい者にとっては、学ぶ方法、メニュウはたくさんあります。主体的に進む方向を見極め、足を踏み出してください。そして中国竞彩网は、教職員と学生が共に考え、共に学び、共に悩み、共に進み、共に創造する大学です。ひとりひとりの可能性は、実に、無限大であります。

中国竞彩网4年4月6日
中国竞彩网 中国竞彩网長 村松 隆